Big Band 2023 ~春・夏編~

年の瀬いかがお過ごしでしょうか。どうも、投稿3年ぶりとなるPN:読彙です。言い訳はしません。

 

今年は色々な方にお誘いいただき、数多くのビッグバンドで演奏の機会を得ました。本番があったのは7バンド、本番回数は計16回。演奏した楽曲の総数は63曲で、アルバムが5~6枚出せるくらいには演ったことになります。これ、結構自慢です。

 

この一年、旧交を温めたり、お初の方と合わせたり。西は大阪から、東は宮城まで。せっかく日本各地で沢山の方と演奏できたのですから、文章にでも残しておこうと思い、久々に筆を執ることにした次第です。一年のライブをセットリストとともに振り返っていきとうございます。日記ならぬ年記です。全部書くと長くなるので、前編後編にわけてお送りします。個人名を出した文書は内輪っぽくなるので普段はあまり書かないのですが、今回は敢えて。今年ご一緒した皆様へのリスペクトです。

 

3/18(土) 学バン卒業式 @門真市民文化会館小ホール <Muko Jones and Muko Lewis Jazz Orchestra>

www.youtube.com

このライブがなかったら今年の自分がなかったと言っても過言ではないライブ。挾間美帆とかVJOの"Sophisticated Lady"やるって言われてようやくフルートを買う踏ん切りがついたのもそうだし、今まで食わず嫌いだった日本人コンポーザーも悪くないなと思えたのもそう。よいスタートが切れたと思う。

ドラム河中と、今回のライブの発起人でもあるトランペット向田とは中高ブラスバンド時代からのいわば悪友のような関係で、3人ともそれぞれ別の大学にいったものの結局全員がビッグバンドサークルに所属していた。音楽に関する共通の話題が増えた反面、他二人は近畿圏の学バン所属であるのに対し自分は関東圏であったため、山野や対バン等で顔を合わせることはあれどともに演奏することは一度たりともなかった。そんなふたりとようやく同じバンドで組む機会を得られたのは感慨深いというか、思いひとしおというか……とにかく誘ってくれた向田には感謝しかない。あとトランペット菊地祥太を向田と再び会わせることができたものよかった。

他にも懐かしい面々との再会があったのもエピック。かつての東大京大対バンで会ったきりのテナー雑賀・安原のふたり(安原は当時バリトンだったけど)、あと学外で唯一の森林科学系知り合いであるトランペット越くんらと再び相まみえ、6年前のピックアップ以来("Feet Bone"と"Back Bone"のW骨セトリやったなぁ)の共演となった。本番だけとはいえソリストで来てくれたカラメのニイちゃんことトランペット谷口や、リハトラとして叩いてくれたドラム・バディ高岡リッチとともに演奏できたのもうれしいサプライズ。お客さんには学院ブラスのパーカッション大川やホルン竹ノ内様をはじめ、バリトン志摩大輔やトランペット脇坂くんなどマソックの面々も来てくれ、学バン卒業式というライブ名に恥じない集大成感である。

音楽面でも得られたものは大きかった。特に、"Your Scenery Story"の安原テナーソロには物凄い影響を受けた。魂を絞り出すような音色。スピリチュアル、などとというと途端に胡散臭くなるが、こちらの精神に直接干渉してくるような歌い方で、リハーサルの時点で涙を堪えながら聴いていた。今まで自分のソロはコピーばっかりだったけど、もうちょっとアドリブ頑張ってみてもいいかなと思えた。あと向田が4曲目の"Flight of the Foo Birds"でリズム(Piano/Bass/Drums)全部やるやつ。あれは企画も実力もあっぱれ。最高にエンターテイメントだったね。動画もあるので一見の価値ありです。

セットリスト

1. Jeannine (Duke Pearson / arr. Phil Kelly)

2. Off the Cuff (Jim McNeely)

3. Departure (Martha Kato)

4. Flight of the Foo Birds (Neal Hefti)

5. Sophisticated Lady (Duke Ellington / arr. Garnett Brown)

6. First Love Song (Bob Brookmeyer)

7. Your Scenery Story (Miho Hazama)

8. Take the A Train (Duke Ellington)

 

3/19(日) LSOPリサイタル @調布Ginz <LSOP>

会社の人にツテで乗ることになった歴史の長いバンド。1970年代初頭の小石川高校OBらが結成したが、メンバーの高齢化や入れ替わりを通してOBバンドとしての性格は薄れ、僕みたいな部外者もOKというのが今の流れのよう。中核メンバーはみな軒並み60代後半ということで、なんとVJOのサックスセクションとほぼ同期なのだ。Thadの来日公演も生で聴きにいったことがあるらしい。羨ましいなどというものではない。

昨年の加入当時はパーカッションで数曲担当だったところ、ちょうど3rdAltoの方が体調を崩されたということで自分がその枠にスライドすることとなった。こととなったのはよいが、Altoとしての初本番が年度末のリサイタルだったため、その年やってきた10曲あまりを一度に譜読みする羽目になったのであった。本番もむこふるの学バン卒業式を大阪でやった翌日とんぼ返りで調布、というのでいっそうキツかった記憶がある。

現バンマスのトランペット藤井さんはコテコテの関西人で、ソロがアホほど巧い。特に往年のビバップ吹かせたらそらもう立板に水でフレーズが出てきはる。コンマストロンボーン菊地さんは今までの自分になかった観点で普段の合奏をみてらっしゃって、他バンドで自分がコンマスする際に非常に参考にさせていただいている。参考音源に従う部分と、譜面に対する独自の解釈を加える部分の匙加減が見事。原曲至上主義だった(いまでも大概そうではあるが)自分の曲の仕上げ方に一石が投じられることとなった。

セットリストは流石の年の功、王道寄りの曲が並ぶ一方で、かつてバンドと交流があったというトロンボニスト・John Fedchockのアレンジなど、他ではお目にかかれない曲もちらほら。数百曲のアーカイブがあるということなので、これからしばらく退屈しなさそうです。

セットリスト

1. Warm Breeze (Sammy Nestico)

2. I Love You (Cole Porter / Arr. Les Hooper)

3. Say When (J. J. Johnson)

4. Three and One (Thad Jones)

5. Antigua (Bob Mintzer)

6. Central Park West (John Coltrane / Arr. John Fedchock)

~休憩~

7. Cute (Neal Hefti / Arr. Bob Mintzer)

8. Bebop and Roses (Alan Broadbent)

9. Moonlight Serenade (Glenn Miller / Arr. Bob Minzer)

10. You and the Night and the Music (Arthur Schwartz / Arr. John Fedchock)

11. Polka Dots and Moonbeams (Jimmy Van Heusen / Arr. Dave Barduhn)

12. And That’s That (Dennis Mackrel)

Enc. Dreamsville (Henry Mancini / Arr. Frank Mantooth)

 

3/25(土) 上智NSO卒コン @Live in Buddy 江古田 <Varnished Jazz Orchestra>

www.youtube.com

どうして私が上智大に?

上智大学のビッグバンドサークル、New Swing jazz Orchestra(通称:NSO)の卒業コンサートである。3月で卒業する代の組んだバンドと、新年度のレギュラーバンド(とは言っても今のNSOにレギュラーはないのだが)(かなしい)を中心に、NSO出身系のOBバンドも多数出演する。いや、普通にいいイベントだと思う。JJWはあんまりOBと現役の交流が活発ではないので(そこが気楽でよいところでもあるとはいえ)。

今回は自分の一つ上の代でコンマスだったトランペット伊澤さんのもと召集された、VJOの曲をメインでやるVarnished Jazz Orchestraの旗揚げ公演であった。知り合いはJJWに所属してたベース林リウヤ、バンミスでもあるトランペット黒江、あとはドラムのニノさん(二宮さん)くらい。うそ。現役のときになんやかんや親交があったトロンボーンの菊地てつや君と斎藤ももえちゃん、ピアノのはるさめさん(はまべさん)もおる。でも半分以上はお初。しかもこのバンド、NSOの歴代コンマスが4人もいるらしい。ドリームチームやんけ。

ライブやって改めて思ったけど、VJOの曲って1曲がまぁ長い。30分の尺だと3曲が限界だった(1曲マクブライドのやつあったけどこれ以上入らん)。体力ゥー、という感じ。あまりJJWの人以外とサドメルVJOやることなかったし、まだまだアウェーではあったが、まずはこんなもんかというところ。引退してもう5年経つけど、交流って広がるもんやなぁ。

セットリスト

1. Optimism (Steve Davis)

2. Compensation (Kenny Werner)

3. Don't Even Ask! (Jim McNeely)

 

4/29(土) Big Band Bunny @新宿SOMEDAY <Az Zen Breeze>

自分が唯一パーカッションのみで乗らしてもらってたバンド。こっちは余計に交流のない界隈で、知ってたのはアルト加藤諒大とトランペット鹿口さん、トロンボーンののもしんくん(野本しんたろう)だけ。個人の力量は粒揃いで、なかなかすごいバンドやったと思います。実際、かなり実力不足を痛感し、練習に行くのがしんどいなぁという時期もありました。僕以外のリズム隊みんな巧いねんもん。

曲の方も海外のコンポーザーに直接コンタクトして取り寄せたり、メンバーが作曲編曲したりとなかなか耳にできないものばかり。音楽の裾野が広がると、それだけ元から知ってる曲へのアプローチの仕方も広がるものです。今回は楽譜の指示にアンクルンという東南アジアの楽器の使用指示があったのがおもろかった。普通に音楽やってたらそんなん出会わへんやん。楽器店見て回ったけどどこにも売ってなかったんで自作しました。本番マイク無かったんでなんも聞こえへんかったっぽいけど。

ライブはGreen Hill All Starsさんと。ゴキゲンなSwingが多く、僕好みのもの。当日は初めて自分で機材車を出しました。ライブハウスはコンガの機材設置を義務化してほしい。あと対バン相手の方から「アルトの三好さんですよね? ファンです」という旨のお声をいただいた。帽子も被ってないのに気づいてもらえるとは……感謝感激です。そういうお言葉をいただくたび、奏者として生かされているなぁと感じます。まぁ当の本人はサックス放り出してポコスカやってたけど! すまんな!!!

セットリスト

1. Clutch (Dan White / Arr. Yuki Shinojima)

2. From East to West (Evgeny Lebedev / Arr. Yoko Suzuki)

3. London Towne (Benny Benack III / Arr. Steven Feifke)

4. Direct Flyte (Michael Nelson / Arr. Makoto Kaguchi)

5. エイリアンズ (Yasuyuki Horigome / Arr. Yuki Yamashita)

6. Departure (Martha Kato)

Enc. 接吻 (Takao Tajima / Arr. Tokimeki Records)

 

5/21(日) 池袋ジャズ @東武百貨店 スカイデッキ広場 <くめ記念病院>

4年前に一度乗せてもらった、ピアノの院長・久米さん率いるくめ記念病院にて。このバンドもこのバンドで、どこから引っ張ってきたんやっていう曲を好き嫌いなくやるバンドです。なんでも食べます。健康。

練習は1,2回しか出れませんでしたが、リードアルトの本多さんの横でサードとして吹くのが一番のクリニックになるわね~となりました。本当に。ただこのバンド、院長のお気に召さないのかオールドファッションなSwingはあんまりやってくれないので、そこが心残り。わしはSaxソリが吹きたいんじゃ。

本番でいうと、僕らの後にやってたGame Music Societyがめちゃくちゃ良かった。僕はゲームミュージックを別の音楽形態に移して演奏することにことさら懐疑的(OST is 至高、圧倒的原理主義者、脈絡のないピアノアレンジやオケアレンジは滅んで♡派)なんですが、このバンドは良かった。マリカ∞DXのテーマとか原曲まんまで最高だったし、メタナイトの逆襲メドレーはグレープガーデン(SDX版)が入ってて声出た。自分もゲーム音楽やってみてぇ〜〜〜、ビッグバンドにする意義のある曲を……。

セットリスト

1. Give It a Year (Jon Hatamiya)

2. Pan Con Pan (Gabriel Perez)

3. Sabotage (Jared Schonig / Arr. Alan Ferber)

 

7/2(日) Portrait  in Jazz @銀座Lounge Zero <Az Zen Breeze>

Az Zen Breeze、長期活動休止前最後の本番。対バン相手は6Fとしゃち、相手にとって不足なしというところ。今回はギターの兄さん山下さんが卒業制作で書かれた曲なども交えて、より多彩なセットリストに。人の卒制を演奏することってあるんだ。

演奏したのは銀座の雑居ビル7階だか8階だかにあるラウンジ。全体的に内装きらびやかに、ウェイターの方はかっちりベストに身を包んでいて、明らかに学生に毛をはやした程度の団体が使っていい場所ではないだろ……と思いました(こなみ)。

個人的に思い出深いのが、"Chakafrik"という曲。作曲者のEmilio Sollaはアルゼンチンの生まれらしく、この曲もアルゼンチンタンゴの延長らしい。参考音源を聴いてみるとたしかに拍頭のアクセント感が強い6/8で、2拍子がずずいずずいと曲を前進させていくようなグルーブをしている。バンドネオンはあれど打楽器は一切登場しない、さてどう組み立てたものか……と思い曲を繰り返し聴いていると、突然天啓が降りてきた。カスタネットだ。これ、カスタネットが合うぞ。しかし、民族音楽というものに触れてこなかった自分は、本当にこの楽器を使っていいのか判らなかった(そもそも「民族音楽」などという大味なくくりをしている時点でたかがしれている)。カスタネットを2拍鳴らすのはタンゴ的にOKなのか? 調べると、タンゴの基本的な編成はバンドネオン、バイオリン、コントラバス、ピアノと出てくる。やっぱり打楽器おらんやんけ。散々頭を悩ませた挙句、「いやサックスとか使うてビッグバンドにしとる時点でもう原型あらへんやないかい」ということに気づき、すぐさま田原町のパーカッション屋に足を運んだのであった。僕の誤った異文化理解が曲に新たな彩を添えられたいたなら、そしてそれを楽しんでいただけたなら幸いです。とはいえ、フラメンコにでも手を出さない限り、もう一生出番はないかもね、カスタネットくん(¥5,500)……。

セットリスト

1. Stutter Funk (Gareth Lockrane)

2. Chakafrik (Emilio Solla)

3. London Towne (Benny Benack III / Arr. Steven Feifke)

4. Dawn of the Line (Yuki Yamashita)

5. What Really Counts? (Gabriel Santiago / Yuya Yoneda)

Enc. 接吻 (Takao Tajima / Arr. Tokimeki Records)

 

8/6(日) Sophia Summer Festival @赤坂B♭ <Varnished Jazz Orchestra>

www.youtube.com

3月の卒コンで交流のあった3バンドが、今回はしっかり尺取って演奏しましょうということで開催した対バン。タイトルにSOPHIAが付いてるのはそういうことですね。お相手はぺぽよばんどさん、Fascinating Rhythm Jazz Orchestraさん。演奏会場は赤坂B♭、昨年オーナーの方が逝去されたときはどうなるかと騒がれましたが、山野楽器の資本が入ってむしろ音響パワーアップしてました。改装後まだ行かれてない方はぜひ。

演奏はいい感じにいきました。やりたいことが定まっているバンドはやはり方向性にまとまりが出てよい。メンバーの方ともぼちぼち話せるようになり、いつの間にか居心地よくなってきた。とりあえずMCやるにあたって、メンバー全員の名前を覚えたのが功を奏したのかもしれない(人の名前と顔覚えるの苦手で……)。MCは、上智関係者の集まる中でやるのは少し憚られましたが、前日までしっかり文章を練ったおかげかちゃんと狙って書いた部分で笑いを取れたので割と満足なテイク。とはいえMCが一笑い取らねばならないという風潮、少し息苦しくはあります。笑いがすべてを支配する国・大阪に生まれというだけで、そういうノリを過度に期待されることもままあったので。MCはもっとこう、演奏してる曲の蘊蓄とか語る場でいいんだよ。

MC関連でもうひとつ触れていくと、自分が話している間、出番の終わった演者が舞台袖でがやがやしゃべっていたのが気になった。僕が話すのを止めると、向こうもピタッとやむ。が、こちらが再開するとまた騒がしくなり始める。あまりにもわかりやすいので最早面白いまであったが、なんだかなぁという感じである。人が話をしているときは、なるべく私語をせずに聞こう。

セットリスト

1. A-That's Freedom (Hank Jones / Arr. Hank Jones)

2. Don't Even Ask! (Jim McNeely)

3. Compensation (Kenny Werner)

Enc. Hello and Goodbye (Bob Brookmeyer)

 

8/27(日) 蕨市民音楽祭 @ <LSOP>

www.youtube.com

春のリサイタルからだいぶ時間がたち、メンバーもちょいちょい入れ替わったLSOPの本番。何気に埼玉県で演奏するのは初? であった。このバンドは本番が決まっていなくても決まって月2回は合奏をすると決まっている。腕をなまらせずに済むのでありがたい。今回は3rdトロンボーンの枠が空いてたところ、長尾がビッグバンド復帰したいと言ってたので、渡りに船ということでトラで乗ってもらうなどした。

このバンドのリードトランペットを務める森くん、会社の同期でしかも配属まで一緒なのである。一個下の芝浦のコンマスだったらしい。2019年の山野ではCSJO→JJWの順で演奏だったので、舞台上ですれ違っていた可能性まである。いやはや袖摺りあうも今生の縁である。選曲案にスタンケントン上げてるのは流石。

セットリストはなんかサドメルの曲が半分になってしまった。これじゃあいつもと変わりないわね。MCのギター小倉さんが「最後に演奏するのは"Groove Merchant"という曲で、これも同じくサド・ジョーンズの曲なんですが……」と話したところで、僕の横に座っているバリトンの金子さんが「いやサドは編曲しただけで、ありゃジェローム・リチャードソンの曲だろ」とぼそぼそ言っていた。金子さんは根っからのビッグバンドオタクという感じで、「"Rhoda Map"もいいが、ローダ・スコットといえば本人の書いた"Mach 2"の方がオレは好きだけどね」「この"Inner Urge"、作曲がジョーヘンで編曲がテッド・ナッシュだから実質サドメルだな、ダハハ」などと盛り上がることができた。歳が40離れていても同じ音楽の話ができるのは、幸せなことである。

セットリスト

1. Rhoda Map (Thad Jones)

2. Tip Toe (Thad Jones)

3. Darn That Dream (Jimmy Van Heusen / Arr. Frank Mantooth)

4. Pegasus (Hank Levy)

5. Inner Urge (Joe Henderson / Arr. Ted Nash)

6. Groove Merchant (Jerome Richardson / Arr. Thad Jones)

 

 

前編はここまで。後編は大晦日にでも更新できたらいいかなと思ってます。ではまた。